それは大地に寝転んで、樹を見上げる時。
まるで動物のように、
道なき道を進み、
草や落ち葉や苔の上に寝転び、
目の前に広がる風景をただ見つめる。
そんな時。
何かをする訳でもなく、
ただ、居るという事を味わう。
そこにいる樹と同じ事をして居るだけ。
シンプルだけど、心が急いでいると出来ない。
東京生まれの自分にはエンターテイメントが
有り余るほど周りにあった。
でも、大自然はわずかなものだった。
受験で忙しくなる前、小4の頃、
友達と毎日公園で遊んだ。
ほとんど人が来ない穴場。
木登りに、木の実や木の葉でおままごと。
富士山より遠くに夕日が沈むのを、毎日樹の上から見た。
この贅沢な時間は、私の中のオアシスだったのだと今は思う。
そんな事は忘れ、大学生になりOLになった。
パソコンばかり見つめる毎日。
オフィスはみんなグレーで、四角くて、冷たい。
何かが違う。
ちょうどその頃、友人が面白いイベントを思いついた。
’’夜の森で眠ろう’’
テントなし、寝袋のみで森で一晩眠る企画だった。
必要最低限の物を持ち、ケータイもOFF。
暗くなる前に広い森の中で、自分の寝床を作り
焚き火で温まった後、眠りにつく。
樹が多い原生林では、星や月も見えない。
真っ黒な樹々に、間から見える空の群青色。
怖くはなく、贅沢な気分だった。
よく眠り、陽の光で目覚める。